JR四国と徳島バスでは、徳島県を運行するJR牟岐線の阿南駅~浅川駅において、並行する路線バスとJRの切符および定期券が共通で使用できるというシステムを2022年4月1日から導入しました。
運賃面の連携とは?
牟岐線の阿南駅から南の区間は、徳島バスの路線バスが並行しています(※正しくは高速バスの途中乗降が可能なシステム)。
この徳島バスの高速バスの途中乗降区間にて、JRきっぷ・定期を使用可。阿南駅でJR⇔バスの乗り継いでも通し運賃を適用されることが2022年4月1日から始まりました。
ざっくり言えば、徳島駅から浅川(駅)へ行くのに、JRの切符を買った場合は「①そのままJRで乗り通して浅川駅に行く」「②阿南駅までJRで行って阿南駅からバスの乗り換えて浅川バス停で下車」のどちらも利用できるということです。
なお、JR牟岐線の終点(最南端)はDMVと乗換ができる阿波海南駅ですが、徳島バス(高速バス)が阿波海南駅に隣接したところにバス停を設けていないため、この通し運賃の対象は一つ前の浅川までとなっています。
どのように便利になる?
JR牟岐線は徳島駅(徳島市)と阿波海南駅(東洋町)を運行する鉄道路線です。
このうち、徳島駅と阿南駅(阿南市)の間は概ね1時間に2本列車が運行していますが、阿南駅より南側は運行本数がぐっと減り、阿南駅から日和佐・牟岐・浅川・阿波海南方面へは昼間時間帯では2時間に1本しか列車が運行していません。
このように日和佐・牟岐方面へ向かう列車は1日11本、浅川・阿波海南方面で行ける列車は1日6本となっています。
一方で、牟岐線の阿南駅から南の区間は、徳島バスの路線バスが並行しています(※正しくは高速バスの途中乗降が可能なシステム)。
この路線バス(高速バスの途中乗降可)は1日4本あるので、それを合わせると阿南駅から日和佐・牟岐方面へ向かう公共交通機関は以下のダイヤとなります。
- 阿南駅から日和佐・牟岐方面へ向かう列車およびバスダイヤ(2022年3月12日現在)
・06:22発 阿波海南行(JR)
・07:46発 牟岐行(JR)
・10:21発 阿波海南行(JR)
・12:08発 甲浦方面(徳島バス)
・12:21発 阿波海南行(JR)
・13:03発 甲浦方面(徳島バス)
・14:21発 阿波海南行(JR)
・15:33発 甲浦方面(徳島バス)
・16:28発 阿波海南行(JR)
・17:25発 牟岐行(JR)
・18:21発 阿波海南行(JR)
・19:22発 牟岐行(JR)
・19:58発 甲浦方面(徳島バス)
・20:02発 牟岐行(特急むろと)(JR)
・22:12発 牟岐行(JR)
なんと、日和佐・牟岐方面へ向かう列車は1日11本→15本(約1.4倍)、浅川・阿波海南方面で行ける列車は1日6本→10本(約1.7倍)となります。運行本数が増えて利便性が向上するのです。
1日4本の徳島バスは、徳島から来た阿南止めのJRから乗り換えることができるので、阿南だけでなく徳島方面からの運行本数も増えるのです(もちろん乗換というデメリットはありますが)。
なお、実際は12:08発の徳島バスは途中で後から発車する12:21発阿波海南行のJRに、19:58発の徳島バスは後から発車する20:02発牟岐行JR特急むろとに抜かれてしまうオチがあるため、徳島・阿南からの日和佐・牟岐方面の有効本数は1日11本→13本(約1.2倍)、浅川・阿波海南方面で行ける列車は1日6本→8本(約1.4倍)なのが実状です。が、20:02発のJRは特急なので特急料金が必要ですし、阿南以南の途中区間では実際に1日4本使えるダイヤが増えるので利便性が上がるのは間違いない話です。
なお、牟岐方面から阿南方面へ向かう場合も、1便だけ徳島バスがJRに抜かれるため同じようなことになっていますが、概ね利便性としては同じようなものになっています。
全国初の取組み
このような並行する鉄道とバスの運賃面での連携は全国初の取組みとなっています。1)
効果は?
このJR四国と徳島バスの共同経営(鉄道とバスの運賃面での連携)の効果(メリット)は以下の3つです。
- 運行間隔の短縮
- 利用者の増加(利便性向上)
- 両社の収益の増加
鉄道・バスの運賃面の連携(共同経営)により、徳島南部地域の平均運行間隔時間が20分以上短縮するといった効果があります。2)
また、わずかながら利用者が増えているといったデータもあります。
JR四国が、共同経営開始から1か月がたった2022年5月に発表したデータによれば、4月1日から17日までの間、JRの乗車券を使って阿南~浅川間で高速バスを使った人は 「1日平均1.71人(延べ29人)」 だった。前年度に阿南~甲浦間で高速バスを利用した人は1.42人だったので、わずかながら増加している。
出典)『JR四国・徳島バスの「共同経営」は地方衰退の防波堤となるか? 全国初の試み、増収以上に必要な公共交通の未来とは | Merkmal(メルクマール) – (2)』<https://merkmal-biz.jp/post/18719/2>-2022年8月24日閲覧
また、この運賃面の連携(共同経営)によって、JR四国は約41万円、徳島バスは約52万円の増収を想定しています。3)
わずかながら利用者が増えている件についてJR四国の社長は以下のように述べています。
西牧世博社長は「決して多い数ではないが、利用していただいているのは評価できるのではないか。他の地域に波及させるためにも、何らかの成果を上げなければならない」と話す。
出典)『運賃の連携で乗客微増 JR牟岐線と高速バス:朝日新聞デジタル』<https://www.asahi.com/articles/ASQ536TWGQ4VPTLC026.html>-2022年8月24日
これだけの数字を見ると、たったこれだけ?と思うかもしれません。しかしながら、全国初の取組み、として見守っていきたいと思います。
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参考文献
1)『鉄道乗車券で高速バスOK 徳島・JR牟岐線の並行区間、運賃で連携:朝日新聞デジタル』<https://www.asahi.com/articles/ASQ33654VQ33PTLC01H.html>-2022年5月21日閲覧
2)『徳島南部地域におけるJR四国と徳島バスの連携について』<https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/content/001471252.pdf>-2022年5月21日閲覧
3)『徳島県南部における共同経営計画、令和4年3月3日、徳島バス株式会社・四国旅客鉄道株式会社』<https://www.jr-shikoku.co.jp/02_information/tokushima-kippu/pdf/kyoudou-keikaku.pdf>-2022年8月24日閲覧