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神戸市が都心部のタワーマンション建設を規制へ

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神戸市役所から見た三宮

以前から話題となっていた、神戸の高層タワーマンション規制の件。ついに具体的に動き出すそうです。

神戸市は、三宮の中心部での住宅建設を禁止した上、その周辺の新神戸や元町、JR神戸駅近辺でも高層のタワーマンション建設を規制する方針を固めた。

出典:神戸新聞NEXT|総合|高層タワマン、都心部に建設ダメ 神戸市が規制へ<https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201906/0012415103.shtml>(2019年6月11日閲覧)

この神戸の施策は応援したいなぁ、と思ってます。大変そうですが、他の都市と差別化を図って発展していって欲しいです。

神戸の現状

タワーマンション

神戸市の中心部、中央区ではタワーマンションが増えています。中央区には市内全域文の1/3にあたるタワーマンションがあります1)

産業

製造業は2005年を基準とすると、製造品出荷額等や就業者数はほぼプラスを維持しています。

一方、事業所数についてはマイナスです2)。 オフィス空室率は2017年12月期で3.6%となっており、年々空室率が下がっているのが現状です2)

商業に目を向けると、神戸地区百貨店売上高は年々減少しています2)

景気と雇用

市内の景気のDI値は2018年12月現在でここ数年で最も高い水準となり、約4年ぶりにプラス値となっています2)

雇用の概況に目をむけると、兵庫県の完全失業率は5年連続で改善(2.8%。近畿の3.0%より低い)、有効求人倍率の年推移も前年に高水準で推移し、神戸地域は1.41倍です(兵庫県の有効求人倍率は1.28倍。全国は1.50倍)2)。雇用保険受給者数も2012年以降逓減が続いています2)

神戸市の課題

都市経営としての課題

①人が集まる街

神戸市の久元市長は以下のように述べられています。

「神戸を大阪のベッドタウンにはしない。阪神間や神戸より西の都市からも、人が集まる街にすることが持続可能な都市経営に不可欠」

出典:神戸市がタワーマンション建設の規制 | マンション管理士事務所JU<http://mankan-ju.com/news/%E7%A5%9E%E6%88%B8%E5%B8%82%E3%81%8C%E3%82%BF%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E5%BB%BA%E8%A8%AD%E3%81%AE%E8%A6%8F%E5%88%B6>(2019年6月16日閲覧)

②居住機能の過度な増加に対する課題

都市の活力とにぎわいを創出するためには、働く場とともに一定の定住人口が必要であり、都心においても同様です。しかし、過度に居住機能が増加すると、以下のような課題も懸念されます。

・商業、業務などの都市機能の立地阻害
・小学校など子育て関連施設の不足
・災害時の避難場所・備蓄のさらなる確保
・商店街など歩いて楽しむ回遊ルートでの建物低層部のにぎわい連続性の阻害

出典:魅力と活気あふれる都心づくりをめざして ~都心の土地利用誘導施策(素案)~<http://mankan-ju.com/wp-content/uploads/2019/01/%E7%B4%A0%E6%A1%88.pdf>(2019年6月11日閲覧)

神戸市としてはもちろん都心でも定住人口は欲しいと考えているものの、その代償について危機感を感じているようです。

タワーマンションの課題

増えているタワーマンション。今後以下のような課題が考えられます。

①持続可能性の確保

修繕積立金が不足した場合、マンション住人の合意形成の困難さから修繕積立金の増額や修繕工事ができないといった事態が想定されます。タワーマンションの修繕工事費は他のマンションと異なって割高3)です。タワーマンションの修繕工事ができないといった事態は大変です。このため、将来の修繕工事をどのように円滑に行うかが課題です。

②災害対応

居住者が多いことから地震などの災害時に、備蓄や避難場所の確保の問題があります。また、停電によりエレベーターが停止した場合は、高層階の住民や高齢者の生活は大変です(もちろん、災害はおこって欲しくないものですが)。

③良好なコミュニティの形成

タワーマンションでは,低層階,中層階,高層階で購入者層の違いがあることや投資目的・セカンドハウスとしての所有者が比較的多いことなど,区分所有者の属性が多様化していることが多いため,規約改正の決議などの際に合意形成を図ることが難しい状況にある。

出典: タワーマンションのあり方に関する研究会:神戸市におけるタワーマンションのあり方に関する課題と対応策(報告書)、平成30年12月<http://www.city.kobe.lg.jp/information/press/2018/12/tower_houkokusyo.pdf

また、タワーマンションでは周辺地域との関わりが希薄になりがちで、特に高層階の居住者の行動が減少する傾向が見られ、 周辺コミュニティの形成を阻害する要因となっています2)

コミュニティが形成されないと、災害時の防災・減災に有利な共助の点が不利になります。そのため、いかにして地域住民の良好なコミュニティを形成するかが課題です。

④都心部への人口集中

利便性や土地の有効活用の観点から,タワーマンションの立地が都心部に集中しており,都市のスポンジ化の問題が生じる恐れがあるなど,市域全体の人口分布のバランスの面で課題がある。

出典: タワーマンションのあり方に関する研究会:神戸市におけるタワーマンションのあり方に関する課題と対応策(報告書)、平成30年12月<http://www.city.kobe.lg.jp/information/press/2018/12/tower_houkokusyo.pdf

これは大阪市でも見られる話です。大阪市の人口は近年増えて続けていますが、増えているのは都心部であり、外周部の人口は減っているという状態です4)

どの地域も満遍なく人口を推移させるというのは、各地域の特性・実情の違いを考えれば現実的に無理な話ではあります。しかしながら、都市のスポンジ化によって、以下のような問題が懸念されています5)

  • 生活サービスの縮小・撤退
  • インフラの非効率化
  • コミュニティの存続機器
  • 地下の下落
  • 景観・治安の悪化
  • 転入減・転出増
  • 賑わいの減少・経済活動の停滞
  • 行政サービスの低下

このため、過度な人口集中を避けつつ人口を増やしていくことが課題です。

⑤インフラの不足

これは大阪市も同様ですが、狭いエリアでの人口増加につながり、小学校の過密化などインフラ不足による問題が生じます。

タワーマンションの認証制度導入へ

なお、タワーマンションの課題・問題点については、タワーマンションの維持管理の強化を目的として、認証制度を導入するそうです。こうした制度は全国でも例がないそうです。先進的な取組ですね。

研究会は昨年末、管理組合や開発事業者に必要な情報を市に届け出るよう義務付ける制度と、維持管理が適正な物件を「優良マンション」として認証する制度を組み合わせた「神戸版タワーマンションマネジメント制度」を提案。これを踏まえ、同市は2019年度内の制度設計を目指す。

出典:神戸新聞NEXT|総合|神戸市、タワマン維持管理も強化 認証制度導入へ<https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201906/0012415105.shtml>(2019年6月16日閲覧)

タワーマンション規制のメリット

①商業・オフィスなどの機能拡充

三宮駅周辺は、神戸の玄関口にふさわしい高質な空間づくりのために障壁となる住宅建設を禁止できます。これにより、民間事業による商業や業務をはじめとした都市機能の誘導、活性化の促進につながります。

また、三宮以外の都心エリアは以下の通りです。

②居住機能と商業・オフィス機能の共存

新神戸駅から神戸駅までの約292ヘクタールは「都心機能活性化地区」に指定。大型敷地(千平方メートル以上)に新たに建てられるビルについては、住宅部分の容積率を400%以内に限定する。
 一帯の容積率は従来400~900%のため、オフィスや商業機能を持たない住居のみのタワーマンションが大幅に規制されることになる。久元市長は「居住機能と商業・オフィス機能を共存させたい」としている。

出典:神戸新聞NEXT|総合|高層タワマン、都心部に建設ダメ 神戸市が規制へ<https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201906/0012415103.shtml>(2019年6月11日閲覧)

三宮以外のエリアについては、定住人口の増加と商業・オフィス機能の増加の両方を狙います。過度な人口増加は抑えつつも、 魅力と活気あふれる都心部の形成を図るようです。

③老朽化・災害リスクの低減

現段階では目立たないが、タワーマンションの将来的な課題である、老朽化などによる安全面の不安や災害時のリスクをできる限り少なくするというメリットがあります。

このようなリスクを低減するということは、将来的には他の都市にはない神戸の魅力になるでしょうか。

阪神・淡路大震災を経験した神戸市ですから、このような災害リスクを慎重に捉えているのかなと、個人的に思っています。

④眺望景観の維持

今回の報道やタワーマンションのあり方に対する研究会で触れられていませんが、タワーマンション規制は、眺望景観の維持につながる話です。

神戸市は2010年からポートアイランドしおさい公園を眺望点として、眺望景観を保全・育成するために、建築物の高さと建築物等の幅の誘導基準を運用しています6)

タワーマンション規制のデメリット

①住宅建設規制が広すぎることによる停滞

住宅建設規制は神戸最大のターミナルで繁華街の三宮だけで良いのではないか、といった意見が見られます。

特にタワーマンションの建設が続いたJR神戸駅周辺にまでこの規制の網を掛けた事は現在のハーバーランドの再生と活況の理由を完全に無視していると言えます。また駅北側から新開地に掛けた神戸の旧市街化したエリアは再開発が進まず、老朽化した雑居ビルが立ち並ぶだけの寂れた街に衰退しています。

三宮への更なる中枢集積化や駅東側へのヘソの移動により、神戸駅周辺の特に北側は純粋な都心商業地区ではなく、住宅と商業の複合用途への転換にしか今後の再生はなく、今回の規制導入は同エリアが浮上するチャンスを完全に潰してしまう事になるでしょう。

出典:緊急提言: 神戸市が都心部でのタワーマンション規制導入へ!?2020年7月施行を目指す 本当にこれで良いのか!?|こべるん ~変化していく神戸~(2019年6月16日閲覧)

②都市間競争への影響

日本では都心回帰が続いています。大阪もそうですが、タワーマンションが人口を誘引する原動力となっています。その原動力を断ってしまうというデメリットがあります。

市によると、利便性の高い駅近くのタワーマンションは需要が大きいため、業者側の開発意欲も旺盛で、神戸市の人口を抜いた川崎市でも人口増の原動力となった。神戸市でも市中心部の中央区に、市内全域分の3分の1に当たるタワーマンションがある。05年以降だけで18棟(計4487戸分)が分譲された。

1) 神戸新聞NEXT|総合|高層タワマン、都心部に建設ダメ 神戸市が規制へ<https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201906/0012415103.shtml>(2019年6月11日閲覧)

魅力と活気あふれる都市づくりのための施策(素案)

ただし、規制をするだけで商業やオフィスが集積し魅力と活気あふれる都心になるかどうかはわかりません。

『魅力と活気あふれる都心づくりをめざして ~都心の土地利用誘導施策(素案)~』を見る限り、規制だけでなく以下のような施策を考えているそうです。

  • 総合設計制度による容積率緩和の拡大(住宅等を除く)
  • 民間事業者にたいてい、都市再生事業の認定など都市再生緊急整備地域内における支援措置の活用を促す
  • 企業誘致施策の拡充や附置義務駐車場の隔地の要件緩和等

また、神戸市は三宮再整備として交通拠点機能や徒歩での回遊性が高い空間に整える基本構想を掲げていますが、次のような社会実験を行うそうです。

神戸・三宮再整備に関連し、国交省兵庫国道事務所と神戸市は7月中、JR三ノ宮駅南側の三宮交差点から中央区役所前交差点までの中央幹線(約400メートル)で、車線数を10から6に減らす大規模な交通社会実験を実施する。人と公共交通優先の駅前空間「三宮クロススクエア」の段階的整備に向けた試みで、2025年ごろの第1段階の状態を作り出す。該当区間と周辺の主要交差点で交通量などを調査し、結果を設計に反映させるという。
・・・(中略)・・・
クロススクエアは、三宮交差点を中心に中央幹線とフラワーロードの一部区間にかけて設置。車線を減らして歩道部分を広げ、市民活動や交流イベントなどが行える空間の創出を目指す。三宮交差点の東側は25年ごろの第1段階で6車線、30年ごろの第2段階で3車線とする計画だ。

出典:神戸新聞NEXT|総合|神戸・三宮の幹線道路で実験 車線数10を6に<https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201906/0012423568.shtml>(2019年6月16日閲覧)

三宮から南方面(神戸市役所・税関前方面)へ伸びるフラワーロードと三宮から東方面へ伸びる中央幹線について、車道を削って歩道を拡幅することを考えているようです。

現在の三宮交差点

確かにJR三ノ宮駅から三宮の南側(センター街など)へ行く場合、歩道はあまり広くないが歩行者は多く、交差点を渡るのが面倒な感じがありますので(地下街を使えばまだ気が楽ですが)、回遊性は劣っているのかもしれません。

歩道の拡幅については、大阪の御堂筋も同じような構想を考えていますね。楽しみな構想です。

おわりに

この今回の神戸市の高層タワーマンション規制は、メリットもデメリットもあるというところでしょうか。個人的にはこの規制には賛成です。

神戸については、今後も温かく見守っていこうと思っています。

1) 神戸新聞NEXT|総合|高層タワマン、都心部に建設ダメ 神戸市が規制へ<https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201906/0012415103.shtml>(2019年6月11日閲覧)
2)神戸市経済観光局経済部経済政策課:神戸経済の現状 平成30年12月31日現在<http://www.city.kobe.lg.jp/information/project/industry/examination/genjyo_18_12.pdf
3)タワーマンションのあり方に関する研究会:神戸市におけるタワーマンションのあり方に関する課題と対応策(報告書)、平成30年12月<
http://www.city.kobe.lg.jp/information/press/2018/12/tower_houkokusyo.pdf
4)大阪市:平成30年度大阪市の現状分析<https://www.city.osaka.lg.jp/toshikeikaku/page/0000466335.html>(2019年6月16日閲覧)
5)「都市のスポンジ化」が進行。対策が進まなければ都市の衰退は避けられない!? | 住まいの「本当」と「今」を伝える情報サイト【LIFULL HOME’S PRESS】<https://www.homes.co.jp/cont/press/reform/reform_00597/> (2019年6月16日閲覧)
6)神戸市都市局計画部景観政策課:神戸市の景観施策、令和元年5月<http://www.city.kobe.lg.jp/information/project/urban/scene/img/keikanshisaku.pdf

( この記事は書きかけで放置しています。 少しづつ付け足していきます)

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