北海道の深川駅(深川市)~留萌駅(留萌市)を結ぶJR留萌本線の廃止が決まりました。
2023年3月末に石狩沼田駅~留萌駅が、残り深川駅~石狩沼田駅間が2026年3月末に廃止になります。
唯一、沼田町は存続を求めたいた
深川―石狩沼田間の存続を強く求めてきた沼田町の横山茂町長は「総合的に判断したが、この財産を残したかったというのが正直な気持ちで、無念だ。3年後を見据え、町民と公共交通の基盤を作り上げたい」と語った。
出典)『留萌線、26年3月末までに廃止 JR北が廃止方針の全5線区で決着(朝日新聞デジタル) – Yahoo!ニュース』<https://news.yahoo.co.jp/articles/88f3bc9f4d51d4e4121f6e4280c47c3a81c8c8b8>-2022年8月31日閲覧
沿線自治体の中で唯一、存続を求めたいたのは沼田町です。2022年3月に廃止が決まったJR函館本線長万部~小樽間で唯一存続を求めていた余市町を思い出します。
深川~石狩沼田駅の廃止が3年後に先送りされるのは、地元の高校生の利用を考慮してとのことです。1)
なお、留萌本線の廃止により、JR北海道が輸送密度が低すぎて赤字を原因としたバス転換を求めていた線区の5区間の全ての廃止が確定しました(根室本線 富良野~新得間は廃止時期はまだ確定していないようですが)。
留萌本線の現況
JR留萌本線は2022年8月31日現在、普通列車のみ上下7往復の運行(全便が深川~留萌間の運行)となっており、運行間隔は概ね2~3時間に1本となっています。ただし、普通列車といいながら一部の駅を通過する便が多いです。
留萌本線(深川~留萌間)の2019年度の輸送密度は137人/日と極めて少ない値です。なお、1975年は2245人であり、および四半世紀でたった6%になってしまいました。2)
同じ2019年度で比べた場合、例えばJRの他の線区だと輸送密度が150人/日を切る路線は以下の路線であり、どれだけ少ないのかが良くわかるかと思います。3)4)5)
JR九州・JR西日本・JR東日本 ・JR北海道 輸送密度が150人/日未満の路線(2019年度) |
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路線 | 区間 | 輸送密度 |
北上線 | ほっとゆだ~横手 | 132 人/日 |
磐越西線 | 野沢~津川 | 124 人/日 |
津軽線 | 中小国~三厩 | 107 人/日 |
飯山線 | 戸狩野沢温泉~津南 | 106 人/日 |
肥薩線 | 人吉~吉松 | 106 人/日 |
大糸線 | 南小谷~糸魚川 | 102 人/日 |
只見線 | 只見~小出 | 101 人/日 |
久留里線 | 久留里~上総亀山 | 85 人/日 |
根室本線 | 富良野~新得 | 82 人/日 |
芸備線 | 備中神代~東城 | 81 人/日 |
陸羽東線 | 鳴子温泉~最上 | 79 人/日 |
花輪線 | 荒屋新町~鹿角花輪 | 78 人/日 |
芸備線 | 備後落合~備後庄原 | 62 人/日 |
木次線 | 出雲横田~備後落合 | 37 人/日 |
只見線 | 会津川口~只見 | 27 人/日 |
芸備線 | 東城~備後落合 | 11 人/日 |
※1 JR東海は輸送密度未開示、JR四国には2019年度で輸送密度150 人/日未満の路線なし。
※2 2019年時点で運転見合わせ区間が含まれていた豊肥本線(JR九州)のデータは除外した。
沿線の状況
バス(深川~留萌)
JR留萌本線に並行して、深川~留萌間には沿岸バスと道北バスの路線バスと北海道中央バスの高速バス「高速るもい号」が運行しています。路線バスは1日8往復、高速バスは1日4.5往復で、すべて合わせて計12.5往復バスが運行しています。JR留萌本線は8往復なので、バスの方が運行本数が多いです。
運行区間は路線バスは、旭川駅前~深川十字街~留萌駅前~留萌十字街です。1日8往復運行していますが、2022年10月1日から5往復に減便します。そのため、2022年10月以降の深川~留萌間のバスは9.5往復になります。
令和4年(2022年)10月1日(土)
ダイヤ改正のお知らせ ① 旭川方面
留萌~旭川間の運行回数を 8→5往復 に削減します1.実施日 令和4年(2022年)10月1日(土)
出典)『10月1日ダイヤ改正のお知らせ(PDF版) – 沿岸バス株式会社』<http://www.engan-bus.co.jp/10_pdf/20221001_teikidaiya.pdf>-2022年9月3日閲覧
2.運行系統 沿岸バス 56留萌旭川線 / 道北バス 56留萌線 二社共同運行
3.変更点
① 需要減退にともない、留萌~旭川間を 8→5往復 に削減します。
② 快速便を各駅停車の普通便にあらため、ご利用機会を拡大します。
③ 留萌市内に「南町4丁目」停留所を新設します。
(マックスバリュ留萌店、DCMホーマック留萌店、留萌ブックセンター最寄り)
一方、高速るもい号は、札幌~深川~留萌間の運行となっています。(ちなみに、札幌~留萌間の高速るもい号はもう一つ、滝川経由のものがありそちらを含めると札幌~留萌間の高速バスは1日7往復です)
なお、深川駅~留萌駅間はJR留萌本線では約1時間ですが、路線バスの各駅停車便は約1時間10分、高速るもい号は深川十字街~留萌ターミナル間を約1時間で運行しています。
バス(深川~沼田)
上記の深川~留萌間を運行するバスは沼田を経由しません。別に、深川~沼田間を運行する空知中央バスが運行しています。
運行区間は深川市立病院前~深川十字街~沼田駅前で、運行本数は平日5往復、土曜・日曜・祝日が4往復となっており、JRより少ないです。
私が調べた限り、沼田(石狩沼田)~留萌間を運行するバスは存在しないようです。
道路
深川~石狩沼田~留萌間には、国道233号が留萌本線に並行して通っている他、深川留萌自動車道が2020年3月に全線開通しており、道路交通が充実しています。深川留萌自動車道は深川JCT(ジャンクション)で道央自動車道と接続しており、札幌や旭川方面からの高速道路ネットワークも整備されています。また、深川留萌自動車道の約9割にあたる深川西IC(インターチェン)~留萌ICの間は無料区間になっています。
JR留萌本線(列車)で深川駅~留萌駅間を移動すると約1時間かかりますが、高速道路を利用した場合、深川駅最寄の深川西IC~留萌ICは車で約40分で移動できます。
沼田町は鉄道サブスク「鉄道ルネサンス構想」を提唱していた
沼田町は鉄道のサブスクリプションである「鉄道ルネサンス構想」を提唱するなど、留萌本線に限らずJR北海道全体の鉄道を守るための提案を行っていました。
詳しくは以下の記事・動画をご覧ください。
残念ながら鉄道ルネサンス構想の提案は、留萌本線の存続には役立ちませんでした。しかしながら、鉄道のサブスクは何も突拍子のある提案ではありません。
例えば、スイスでは年間44万円を払うと国内の公共交通が乗り放題といったシステムがあります。6)
また、2021年11月からオーストリアでは年間(日本円換算で)約14万4千円(1日あたり約400円)で国内すべての公共交通が乗り放題になる年間チケット「気候変動チケット」が使えるようになりました。7)8)
今後は
廃止後は、代替バスが運行されるようです。
また、JR北は廃線から最大18年間分の代替バスの運行費を支援するほか、廃線後の街づくりの支援金として4市町にそれぞれ7千万円を出す。
出典)『留萌線、26年3月末までに廃止 JR北が廃止方針の全5線区で決着(朝日新聞デジタル) – Yahoo!ニュース』<https://news.yahoo.co.jp/articles/88f3bc9f4d51d4e4121f6e4280c47c3a81c8c8b8>-2022年9月31日閲覧
ロケ地に使用された駅
沼田町にある「恵比島駅」は、NHKの連続テレビ小説「すずらん」(1999年放送)に使用されました(明日萌駅として使用されました)。遠野凪子さん、柊瑠美さん、橋爪功さんらが出演された作品です。
過去記事
関連サイト
参考文献
1)『北海道・留萌線、26年春で全廃 JRがバス転換を支援:東京新聞 TOKYO Web』<https://www.tokyo-np.co.jp/article/198963>-2022年8月31日閲覧
2)『輸送密度の推移 – JR北海道』<https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/region/pdf/koumoku/01_2020.pdf>-2022年8月31日閲覧
3)『ローカル線に関する課題認識と情報開示について、2022年4月11日 西日本旅客鉄道株式会社』<https://www.westjr.co.jp/press/article/items/220411_02_local.pdf>-2022年8月31日閲覧
4)『路線別ご利用状況(2017~2021年度) – JR東日本』<https://www.jreast.co.jp/rosen_avr/pdf/2017-2021.pdf>-2022年8月31日閲覧
5)『線区別ご利用状況 – JR九州』<https://www.jrkyushu.co.jp/company/info/data/pdf/2019senku.pdf>-2022年8月31日閲覧
6)『サブスクリプション型全国乗り放題サービスの可能性 -公共交通の標準化運賃制度の受容性に着目して-、第16回日本モビリティ・マネジメント会議 @熊本城ホール』<https://ssl.alpha-prm.jp/jcomm.or.jp/16th_jcomm/data/R3PB23.pdf>-2022年8月31日閲覧
7)『オーストリアの公共交通、1日3ユーロで乗り放題: 日本経済新聞』<https://www.nikkei.com/article/DGKKZO76328810U1A001C2FF2000/>-2022年8月31日閲覧
8)『すべての公共交通機関で使える「気候変動チケット」オーストリアで始動 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD』<https://ideasforgood.jp/2021/11/12/klimaticket/>-2022年8月31日閲覧