高架橋とは、道路や鉄道などを空中に通すために連続して設けられた構造物、と言えばわかりやすいでしょうか。下のような写真のものです。
高架橋の定義・説明
書籍によると、高架橋は次のように説明されています。
”高架橋は、周囲の地表面より高い位置に線路を設ける必要がある場合に、盛土形式ではなく、橋りょう形式にした場合の構造物を指す”
出典:都市鉄道研究会,超図説 鉄道路線・施設を知りつく,2009,p.62
また、鉄道の高架橋については次のような説明があります。
”高架橋は、鉄道のある一定区間を橋梁で連続させた構造物で、ほとんどの場合、鉄道と道路交通の立体化を図ることを主な目的として建設されている”
出典:小野田滋、鉄道構造物探見,2003,p.170
つまり、鉄道の場合は道路と平面的に交わらないよう、高いところを通すために連続的に橋梁を設けた構造物を言い、道路の場合は、鉄道や他の道路と平面交差しないよう高いところに連続的に橋梁を設けた構造物を言います。
高架橋の種類は大きく分けて、主にラーメン高架橋と桁式高架橋の2つがあります。
ラーメン高架橋
柱と梁部材を剛結し、柱・梁・床版(スラブ)が一体化した構造の高架橋で、合理的で経済的に優れた構造となっています。
鉄道の高架橋では、一般的にこのラーメン高架橋がよく採用されています。
上の写真は大阪環状線(玉造~鶴橋間)のラーメン高架橋。高架下に建物が密集しているため、見ただけではラーメン高架橋と判別がつきにくいと思いますが、都市部だとこのように建物と一体になっているケースが多いです(高架駅など)。
一方、理由は不明ですが、道路の高架橋としてこのラーメン高架橋が採用されているケースは極めて少ないです。
といっても全く採用されていないわけではなくて、下のように高速道路に採用されている場合もあります。比較的古い道路構造物にこのラーメン高架橋が採用されているイメージがありますが、どうでしょうか。
桁式高架橋
橋脚上に支承部(シュー)を介して橋桁を載せた構造で、橋脚(柱)と桁が分離された構造が桁式高架橋と呼ばれるものです。
道路の高架橋はほとんどがこの桁式高架橋となっています。また、鉄道の高架橋として、この桁式高架橋が採用されているケースもあります。
ラーメン高架橋と桁式高架橋の使い分け
『【超図説】鉄道路線・施設を知りつくす(都市鉄道研究会)』には、次のように記載されています。
”地盤条件が比較的均一なところはラーメン高架橋を、地盤条件が急変するようなところでは桁式高架橋を採用するのが一般的である”
出典:都市鉄道研究会,超図説 鉄道路線・施設を知りつく,2009,p.62
しかし、これはあくまで鉄道の書籍であるため、道路の高架橋のほとんどに桁式高架橋が採用されていることの説明にはなっていないです。それ以外の要因(高架下利用、用地の問題)があるのだと思いますが、道路高架橋に桁式高架橋が使用される理由については、今後調べたいと思います(勉強不足です)。
ラーメン高架橋いろいろ
東海道新幹線 京都~米原間 近江鉄道豊郷駅付近
東海道新幹線 新大阪~京都間 摂津市 貨物新幹線遺構部分(2014年撮影)
阪急千里線 柴島~淡路間(建設中)-2014年撮影
2層式の高架橋です。淡路付近連続立体交差化事業により、現在建設中。
2019年3月開業予定のおおさか東線 南吹田~新大阪間の高架橋(2015年撮影)
阿佐海岸鉄道 甲浦駅直下の単線高架橋
単線なので幅が小さく、コンパクトな感じの高架橋です。
えちぜん鉄道三国芦原線 福井口~まつもと町屋間の単線高架橋
こちらは同じ単線でも1柱式の高架橋。
桁式高架橋いろいろ
阪神高速12号守口線 都島~長柄間
阪神高速13号東大阪線 高井田~長田間 JR高井田中央駅付近
道路の高架橋の場合、このように高架下を平面道路が平行している場合が多いです。
福岡高速3号空港線 岡JCT
阪神高速16号大阪港線 阿波座~西船場JCT間(2014年撮影)
その他の高架橋
『連続PC箱桁橋』
長野自動車道 岡谷高架橋
1986年度(昭和61年度)土木学会田中賞を受賞した上下部工一体5径間PCラーメン箱桁橋。桁と柱(橋脚)が一体化しています。どちらかというとラーメン高架橋に分類されるものなのだと思います。
市街地をダイナミックに跨ぐ高架橋です。
[関連記事]
▽岡谷ジャンクションと岡谷高架橋 (長野県岡谷市)|土木ウォッチング
神戸淡路鳴門自動車道 大鳴門橋~鳴門北IC間 亀浦高架橋
こちらも桁と柱(橋脚)が一体化している連続PC箱桁橋です。昭和59年(1984年)完成。関係ないですが、左上に見えているのは大塚国際美術館です。
[関連記事]
▽【工事記録】本四連絡道路・亀浦高架橋の施工 – コンクリート工学 Vol.23,No.8 Aug. 1985
『開床式高架橋』
JR津軽海峡線 青函トンネル~(当時)知内駅(現・湯の里知内信号場)間 – 2012年撮影
通常、高架橋は列車の走る部分(線路が敷かれている部分)はすべて床があるのですが、雪が床板に貯まらないようにするために、床板に穴が開いている珍しい高架橋です。この写真は北海道新幹線開業前のものなので、現在もこの構造が残っているかどうかは把握できておりません。
『アーチ式高架橋』
パリ 第12区 ヴィアデュック・デザール(芸術高架橋)
[参考文献]
・昭文社:マップルマガジン まっぷる パリ、2012年、p.111
奈良県五條市にある五新線(未成線)の高架橋(2017年撮影)
奈良県五条から和歌山県新宮まで、十津川を縦断して結ぶ壮大な構想があったものの、実現しなかった鉄道の高架橋です。五条~城戸間はほぼ完成したものの使われなかった鉄道構造物がたくさん残っています。
JR総武線 浅草橋~秋葉原間(2018年撮影)
[関連記事]
▽これで見納め?浅草橋〜新橋「高架下建築鑑賞散歩」(次回開催告知あり!) : 熱中ブログ!
『スラブ式高架橋』
阪急千里線 柴島~天神橋筋六丁目間 善教寺付近
『ビル等と一体になった高架橋』
船場センタービルと一体になった阪神高速13号東大阪線 西船場JCT~東船場JCT間
おわりに
高架橋は橋の一種にはなりますが、橋というと一般的に河川をまたぐ橋梁をイメージする方が多いと思います。なので、なかなか知名度が低いと思われる高架橋について説明してみました。
鉄道関係に偏っているものの、今回いろいろ文献等を調べて記事を作成しました。が、もし記載内容に間違いがあればご指摘いただけると幸いです。
[参考文献]
▽竹田 知樹・関 文夫:設計思想から見た鉄道高架橋の構造形態の変遷に関する一考察、土木学会 景観・デザイン研究講演集 No.13 December 2017 pp.177-183
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