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芸備線の利用促進に関する検討会議が開催される

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▲新見駅に停車する芸備線 備後落合行き キハ120系

全国の中でも利用者が極めて少ないとされており路線の存廃問題が発生しているJR芸備線の末端区間について、JR西日本と沿線自治体との会議が2021年8月5日に開催されました。

JR芸備線の利用客を増やそうと、JR西日本や沿線の自治体による会議が5日、岡山市で初めて開かれました。

芸備線の利用促進に関する検討会議には、JR西日本や新見市、広島県庄原市など沿線の自治体が参加しました。

芸備線は年々利用客が減少していて、新見市の備中神代駅から庄原市の東城駅までの2019年度の1日の平均通過人数は81人となっています。

出典:『JR芸備線の利用促進に向けて初の会議 「利用したい時に運行していない」などの声 岡山 | KSBニュース | KSB瀬戸内海放送』<https://news.ksb.co.jp/article/14411606>-2021年8月6日閲覧

平均通過人数とは、ざっくりいうとその区間にどれだけ利用者がいるのかを表す指標です。輸送密度とも言います。平均通過人数(輸送密度)についての説明は以下のサイトが詳しいです。

JRと自治体の話し合いの内容

KBSニュース記事1)によると、JR西日本が自治体に話した内容は

  • 駅からのバスの接続
  • 観光地としての魅力を向上してほしい

といった前向きな内容でした。確かに、鉄道はただの交通手段であるため、ただ鉄道を走らせるだけでなく「地域として鉄道の位置づけ・役割」を明確にすること、また沿線人口が少ない中では「他の地域から人を呼び込んで利用者を増やす」といった広い視点での議論が必要です。

そのため、JR西日本がこのような提案をするのは真っ当な内容だと思います。

一方で、自治体からの声としては

  • ダイヤの本数が少なく利用したい時に運行していない
  • 乗り継ぎ便が少ない

と報じられており1)、このKBSニュース記事だけではこれだけしか書かれておらず他にどのような話合いが行われたのか不明で推測の域を超えないのですが、この記事だけ見るとJR西日本と自治体で話がかみ合っていないように見えました。

一方で、読売新聞の記事2)によると、

庄原市は運賃助成制度や駅舎の改修などの芸備線存続計画を策定し、利⽤促進に取り組んでいることをアピール。広島県は通勤、通学の利⽤拡⼤、地域住⺠や観光利⽤の増⼤を図る取り組みを提案した。

岡⼭県と新⾒市はマイカーからの利⽤の転換や、観光需要など地域外からの利⽤客獲得の必要があるなどの課題を⽰した。

出典:『芸備線利用促進 初会合 : ニュース : 岡山 : 地域 : 読売新聞オンライン』<https://www.yomiuri.co.jp/local/okayama/news/20210805-OYTNT50133/>-2021年8月8日閲覧

といった、自治体から提案・声が書かれており、自治体も利用者増を目標とした取組みを行っているようです。

今のダイヤはとにかく使いづらすぎる

一方で、自治体の利用促進策がこれまで効果が出ているのかというと不明なのですが、とにかく今のダイヤが使いづらすぎるのは事実です。 「ダイヤの本数が少なく利用したい時に運行していない」「乗り継ぎ便が少ない」といった声が自治体から出るのもおかしくないです。特に備後落合~東城の区間は1日3往復しか運行しておらず、私が秘境のターミナルを訪れる鉄道の旅を行った際にも、この区間を通るのに行程が自由に組めず難儀した記憶があります。

さらに、これはYouTubeチャンネル「にっこーけん」さんの『【営業係数100000】乗客は私一人だけ:赤字ローカル線の極致、芸備線の旅(新見-東城-備後落合)【VOICEROID鉄道】』で知ったのですが、備後庄原~東城の区間は沿線の人が日常利用するのにもとても使いづらいダイヤとなっているのです。

そして、ある程度人口が集積している街同士の行き来となる備後庄原~東城の区間は実はバス(高速バス)が走っており、そちらの方が本数が多く所要時間も短いので鉄道よりもバスの方が使いやすいという実態があるのです(※運賃はJRの方が安いです)。沿線の人は日常生活にバスを使っているのでしょうか。

備後庄原~東城間のバスと鉄道のダイヤ

備後庄原→東城

【平日】
バス:庄原08:35→東城09:01
バス:庄原11:41→東城12:17
バス:庄原13:25→東城14:01
JR:備後庄原13:38→東城15:35(備後落合接続17分)
バス:庄原16:25→東城17:01
JR:備後庄原18:03→東城20:59(備後落合接続86分) ※7分後の次のバスの方が東城に2時間13分早く着いてしまう
バス:庄原18:10→東城18:46
バス:庄原19:56→東城20:32
※このダイヤだけ見ると1日8本ありますが、上記のとおり実質7本しか使えないことになります。

【土・日・祝】
バス:庄原10:12→東城10:48
バス:庄原11:41→東城12:17
バス:庄原13:25→東城14:01
JR:備後庄原13:38→東城15:35(備後落合接続17分)
バス:庄原16:25→東城17:01
バス:庄原17:56→東城18:32
JR:備後庄原18:03→東城20:59(備後落合接続86分)

東城→備後庄原

【平日】
JR:東城05:46→備後庄原07:27(備後落合接続9分) ※35分後の次のバスの方が庄原に27分早く着いてしまう
バス:東城06:21→庄原7:00
バス:東城07:13→庄原7:49
バス:東城09:13→庄原9:49
JR:東城13:38→備後庄原15:27(備後落合接続18分) ※35分後の次のバスの方が庄原に38分早く着いてしまう
バス:東城14:13→庄原14:49
バス:東城16:21→庄原17:00
バス:東城17:10→庄原17:46
※このダイヤだけ見ると1日8本ありますが、実は上記のとおりJRは2本ともあとから発車するバスの方が(備後)庄原に先に着いてしまうため、東城→(備後)庄原の利用には実質6本(しかも全てバス)しか使えないことになります。

【土・日・祝】
JR:東城05:46→備後庄原07:27(備後落合接続9分)
バス:東城07:13→庄原7:49
バス:東城08:21→庄原9:00
バス:東城11:11→庄原11:47
JR:東城13:38→備後庄原15:27(備後落合接続18分)
バス:東城14:13→庄原14:49
バス:東城16:21→庄原17:00

高速バスの時刻表は広島電鉄ホームページより参照しました。(2021年4月1日改正)

https://www.hiroden.co.jp/bus/pdf/miyoshi_jikoku_20210401.pdf

結局のところ、ダイヤがよくないから利用者が少ないのか、利用者が少ないから運行本数が減ってダイヤがよくなくなっているのか、卵が先か鶏が先か状態になってしまうかもしれません。ですが、どちらが先かは断定できないけどどこの地域でも生じている「利用者減→ダイヤ減→利用者減→ダイヤ減」が続く減便スパイラルが原因でしょうか。

芸備線末端区間は今後どうなるのか

たくさんの超赤字ローカル線を抱えているJR西日本。これまで京阪神エリアや山陽新幹線の莫大な黒字を内部補助というかたちで赤字ローカル線に補填することで、これら超赤字ローカル線を維持してきた背景があります。その内部補助も昨今のコロナ禍によりJR西日本が赤字になることで不可能になってきています。

これまでは近畿圏や新幹線の収益からローカル線を維持する構造を取っていましたが、コロナウイルスの影響でこれら2線区もが大きな乗客減少に見舞われており、取捨判断に迫られていると思われます。

出典:『JR西日本の「廃止されるかもしれない」路線とは? | 鉄道プレス』<https://207hd.com/post-14376/>-2021年8月6日閲覧

コロナ禍が収束しても鉄道需要は以前ほど戻らないと言われている状況で、収益が全く見込めない芸備線末端区間はこのまま運行維持することは困難であり(JR西日本が破綻してしまいます)、なんとか今の状況を打破する必要があります。基本的には方向性として次の2つしかないと思います。

  1. 鉄道を廃止してバスに転換する(もしくは代替交通すら設定しない)
  2. 赤字を解消して運行を維持する(もしくは赤字をかなり小さくする)

この2つしかないと考えます。

方向性1:鉄道を廃止してバス転換など

「1.鉄道を廃止してバスに転換する、もしくは代替交通すら設定しない」については、そもそもこの区間に鉄道を維持することが妥当なのか、という視点です。沿線の方の利用状況や必要性がわからないため妥当かどうかの判断は私にはできませんが、同様に存廃問題で揺れているJR九州の日田彦山線の添田~夜明間で名古屋大学の加藤先生が以下のように述べられています。

「日田彦山線の不通区間についても本当に鉄道が必要なのか。バスも含めて公共交通のあり方を地域が考えるべきだ。そもそも本当の交通弱者は鉄道に乗らない。総合病院や大規模店舗は駅前にはない。結局、駅からバスやタクシーを使うことになる」

出典:『出典:雑草茂る日田彦山線の不通区間「本当に鉄道が必要?」:朝日新聞デジタル<https://www.asahi.com/articles/ASM364V64M36TIPE01J.html>2019年11月30日閲覧』

おそらく芸備線でも同じ話だと推測します。本当に鉄道が必要なのか、バスでも良いのであればバスで良いのではないか、という話です。鉄道はただの交通手段なので、そこに鉄道が必要だから走っているというのが本来の姿です。必要ないものは赤字を出してまで運行する必要はありません。

もちろん昨今、全国でバスの運転手自体が不足しているという事実があるため、バス転換も容易ではないかもしれません。

方向性2:赤字を解消する

もう一つの方向性は「赤字を解消して運行を維持する(もしくは赤字をかなり小さくする)」です。この赤字解消としての手段としては、

  • 赤字を沿線の自治体等が補填する
  • 利用者を大幅に増やして黒字にする

この2つを考えることができます。以前、私は以下をブログに書きました。

そもそも、鉄道存続を目的とすることが絶対ダメなんてルールはありません。

もし、鉄道を残すこと自体を目的とするのであれば、

・赤字補填のための多額の費用
・鉄道利用者の需要の創出
・そして、バスではなく鉄道が必要だという確固たる意義

この3つが必ず必要であると思います。もちろん、費用負担をどうするか、がもちろん重要なファクターですが、これら3つが揃わなければどこが費用負担するのか、そのような話にさえ行きつかないでしょう。

出典:『根室本線 富良野~新得間について

「赤字を沿線の自治体が補填する」「利用者を大幅に増やして黒字にする」、どちらも難しい話だと思いますが、赤字ローカル線を運行維持するのであればそれ相応の費用もしくは利用者、あるいはその両方を用意する必要があります。赤字ローカル線を自治体が補填するのであれば、なぜそこまでして費用を負担する必要があるのか、という社会的意義が必要だと思います。

そういう意味では、最初に述べたJR西日本が自治体へ提案した内容「駅からのバスの接続」「観光地としての魅力を向上してほしい」、この2つはとても重要なファクターです。

よくある「鉄道がなくなったら困る」とか「なくなって欲しくない」というのは気持ちはもちろんわかるのですが、それだけでは何も前には進みません。誰も救われません。赤字ローカル線の存廃問題に感情論を入れても何も解決しないのです。

鉄道事業者と沿線自治体、一緒になって「鉄道沿線の地域の未来」「これからもまちづくりの方向性」まずこれを共有し建設的な議論を進めていかなければ、赤字ローカル線問題はいつまでたっても良い方向に進まないのでは、と思ったのでした。

関連YouTube動画

関連サイト

JR西日本の「廃止されるかもしれない」路線とは?
JR西日本の長谷川一明社長は、2021年2月18日の記者会見において「ローカル線の維持は難しくなっており、今後の在り方について協議していく」と述べられました。

参考文献

1) 『JR芸備線の利用促進に向けて初の会議 「利用したい時に運行していない」などの声 岡山 | KSBニュース | KSB瀬戸内海放送』<https://news.ksb.co.jp/article/14411606>-2021年8月6日閲覧
2)『芸備線利用促進 初会合 : ニュース : 岡山 : 地域 : 読売新聞オンライン』<https://www.yomiuri.co.jp/local/okayama/news/20210805-OYTNT50133/>-2021年8月8日閲覧

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